第二章 都市シミュレーション学の研究


第1節 研究会について

(1)都市シミュレーション学

 都市シミュレーション学は既存の学問ではなく、あくまでも新しい種の学問としての確立を目指すものである。近年のコンピュータ技術やネットワーク技術の向上はめざましく、誰でも簡単に情報をやりとりできるようになってきた。それはまちづくりという分野にも言えることであり、Webサイトを利用したまちづくりの情報交換や知識の獲得が簡単に出来るようになってきており、市民側からの自発的な参加も非常に多く見られる。その流れを踏襲してヴァーチャルリアリティ等をも含む「都市」を対象としているシミュレーターを研究や教育に利用しようというのが都市シミュレーション学である。ここに松本の定義を引用する。

 現時点で、こうであるという明確なものを示すことが出来ないが、少なくとも「都市シミュレーション学」とは、まちづくり(広義の都市計画)のビジョンを描くに当たって、コンピューターソフト(改良・開発を含む)を使って様々な角度からシミュレーションする事が第一義である。この際、われわれが抱く都市のイメージが、シミュレーションの過程でうまく反映されるならば、都市ビジョン構想に貢献するであろう。その為にコンピューターソフトを実際に動かしながら都市を描いてみる必要がある。こうして描かれた都市ビジョンが単なる空想でなく実体へ還元する作業、アプローチが「都市シミュレーション学」の第二義である。シミュレーションの過程を通して、コンピューターソフトの操作性・実用性などを点検し、都市ビジョン策定について学問的に追究したいと考えている。


(2)研究会のビジョン

 先の定義を元に都市シミュレーション学研究会(以下研究会)のビジョンを求めると、パソコンやネットワークを利用しながら、一般の(地域計画を知らない)人に「まちづくり」に対してのビジョンを与えたり、自由に都市計画を描いてもらったり、都市計画というものを知ってもらったりすることと、専門分野の人材育成が目標となる。その為に研究会としては一般の人向けの自由にビジョンを描いてもらうオープンな部分と、専門的な知識を元に検証・分析するクローズドな部分を持ち合わせる必要がある。前者をWebを中心とした活動で行い、一般の人にも見て、参加してもらい、後者を都市学を学んだ我々ゼミ生が担当し、活動していくことになる。以下にその相関関係を図示する。

 両者は互いに干渉しあい参照して、新しい都市ビジョンの創造とまちづくり手法の創造を目指すのである。クローズドな面を受ける研究会は都市の理論を元にSimCityの理解と検証を行い、それをWebで報告することでオープンなものとし、Webの研究会員を含むオープンな部分からのSimCityを超えたビジョンを受けてSimCity等を用いて新たな活動を行うというのが大まかな流れである。すなわちその両者との間を取り持つのがSimCityであり、この関係の中に人々を引き込むのもSimCityであるということである。SimCityは一般の人にまちづくりというものを身近に感じてもらえるツールでもあり、学習することの出来るツールなのである。多くの都市シミュレーションを研究することも必要であるが、テーマをSimCityと絞ることでSimCityプレイヤーという、SimCityをプレイしながら都市に興味・疑問を持ち合わせた人を参加させることが出来る為、現在ではSimCityを専門的に行っている。体制が整えばより多くのシミュレーションを研究・開発できると思う。また、Webだけではなく実際にそれを運用する形やその場合の注意点なども対象としてゆく。
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