第四章 まちづくり教育の例


第2節 理論を還元するモデル

日米の用途の違い
 SimCityを通じて日米の都市計画手法・制度的手法を比較するようなものも考えられるが、この場合にもプロセスを重視しなければ単なるアメリカの複製に終わり、地域の破綻に繋がることもあり得る。これは地域が歴史的な流れから形成されているからであり、それを重んじる住民がいわゆる地域を支える常民であるからである。その為にも参考にするだけという流れで行うというよりも、そのプロセスを学習することによって、これら常民が培ってきた知識と知恵を潰さないでその思想を活かして日本型の物とは一体どんなものかを考えることが出来るならばまちづくりというものが日本独自の物になることもあるだろう。

 そのような目標を持つことは必要ではあるが、実際にSimCityで日米比較を利用するといったものに地域制を利用する物が考えられる。まず始めに地域制という物はどういったものであるのか、アメリカではどのようになっており、どのような変化を遂げてきたのか、という歴史的な派生から捉える必要があるであろう。これによって住居と商業地区を分けることで出来たダウンタウンや有識者層によって支持された排他的ゾーニングの歴史など、地域制のプロセス部分を学ぶことができるようになる。そしてそこから我々が現代社会とこれからを見据えて何をすべきかと考えることから始めるようにすると良いだろう。特に日本では用途規制に対しては市町村が定める条例により特別用途指定という方法で用途規制の強化を図ることが出来るが、その利用は問題が発生したときでしか使われないこともある。SimCityでは自分が自由に用途を決めることができるわけだが、用途の分化をする作業を行いながら日本の用途について考え、実際の知識を獲得することによって、将来起こりうる問題に対しても用途規制の必要性を感じるだろう。そしてアメリカとの手法的な違いを学んだプロセスから、日本ならばどういった歴史の流れを踏襲して、理論を活かして特別用途を決めるか、という事を学ぶことが出来る。特別用途自体研究中であるためその利用手法については推論でしかないことをお詫びしておく。


 このような利用の方法が考えられるが、あくまでも単なる知識の獲得ではなく、それを活かす知恵を生み出す力を生ませるように、あくまでも自主性を高めて自由な視点から考えさせるようにするべきであろう。ここでSimCityは広く浅いシミュレーションとしてここで大きな力を発揮するのであり、その浅さを補うために専門的な立場から深く掘り下げていくことがSimCityの教育利用の正しい形であると言える。シミュレーションに依存するのではなくシミュレーションをあくまでも都市に触れる一種のツールとして捉えなければSimCityは単なるおもしろいだけのゲーム的活動に終わるだろう。

 この利用の可能性については今後も検証していくつもりである。
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