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市長と市議会 | ||||
(02/11/09) | ||||
SimCityはアメリカの自治体の分類上「市長・議会型」であると[#010]で説明した。 これは行政長官である市長(首長)と立法機関である議会によってチェック・アンド・バランス※1)の関係にある方式で、自治体における一般的な形である。これは連邦政府による大統領・連邦議会による二元主義と同じようなものであると言えるだろう。また、頭に入れておくべきものは、自治体が立法・行政・司法的権限を持つ「地方政府」であるということである。 司法権なんてないようにも感じるが、整地ツールを使って「強制的な立ち退きをさせることが出来る」などは司法的権限を有していると考えることが出来る。州法に従うというのはゲーム上の制限と考えてもらえばいいだろう(予算の形式が決まっているなど)。 しかし、「市長・議会型」には市長が強いタイプと議会が強いタイプなど様々な物がある。まず、一般的なアメリカの市長と議会の役割・特徴をまとめてみることにする。 【市長】
逆に議会での機能として存在する「条例の制定」はある程度条例の形が決まっている(作られた条例の中から選択)という制限内でSimCityでは市長であるプレイヤーの手にゆだねられているという点で異なる。また、税・予算などがあるが、予算についてはまた別の機会にレポートするが市長の行政権による予算編成が一般的のようである。その為税の賦課・歳出予算というのも操作上の便利さを考えまとめてしまってあるのだと思われる。 しかし、SimCityでは市長・議会ともにその特徴すべてを満たしてはいない。任期や給料などはさておき、市長に限って言えばほとんどが議会との関係がそれである。SimCityに議会がないから当然とも言えるわけだが、議会にも前述した様に機能があるわけだから、なくていいというシロモノでもない。そこでアメリカにおける現実の市長と議会の関係を見て見る必要がある。 まず、「市長・議会型」には極端に分けて、議会に力がある「議会優位型」と市長に力がある「首長優位型」に別れる。もちろん、その間も段階的に存在するのだが、極端な方がその特徴差を見いだし易いためこのように分けて説明していく。 【議会優位型】・・・初期の州政方式に似ている。行政と議会(立法)の分権が行われているタイプ
そもそも「市長・議会型」の自治体では、市長の活動は市議会によってチェックされ、市議会もまた市長をはじめ多数の独立した行政委員会から監視を受けるという権限の分散化が図られている(前述したチェック・アンド・バランス)のが普通ではあるが、先に見たようにどちらかが力をより強い力を持つ、ということが現実にはあり得る。 そもそも、首長優位型というのは議会優位型の欠点(責任分散、集約的指揮力のなさ、選挙がめんどくさい)を部分的に除去しており、メリットとして
基本的には首長優位型というのは、首長が力と責任を持つ形になるのでワンマンになることが多くなる。9・11テロの事件後に一躍世界的に有名になったニューヨークのジュリアーニ市長政権下などがいい例だろう(おまけコラム参照)。 [#011]で議会がない理由についてやりましたが、前述したように市議会がなくていいということにはならない。とはいってもその議会というものが完全にないということは都市の運営に支障をきたすので、議会機能がどこかに埋め込まれている(その多くは市長であるプレイヤーに委ねられているとは思いますが)と推測されるわけです。 そこで前述した議会の役割をSimCity的なものに限って上げると
しかし、この条例というものは、市長が「これやろう」と提案できる物ではなく、SimCity 3000ならばアドバイザーなりを通じて、SimCity 2000ならば新聞なりを通じて「この条例が制定できますよ」と言うことを市長に教えてくれる形となっている。その点から見ても、完全に市長と分離した状態で条例を制定する議会みたいな存在があることがわかり、議会による条例の制定、首長による条例の施行というプロセスがそこにあるとする事が出来る。 首長優位型であるなら立法である議会と行政である首長は分けられているのだからそう考えてもおかしくはないだろう。また、議会に対して何も言えないという関係も完全な分権が行われていると考える事が出来る。 では政策についてはどうだろう?政策というのは政治的指針など漠然とした物を指すためSimCityでどう表現したらよいのだろうか。単にプレイヤーの意志、としてよいのだろうか。それはそれで納得できるかもしれないが、政策というのはそもそも予算と連動しているもので、やや強引だがSimCity内で予算をコントロールする事の中に目に見えない議会がある程度の政策を調整している物とも考えられる。もちろん基本はプレイヤーの意志、だろうが。 ただし、これでは議会という物は存在しなくても良いことにもなってしまう。議会が存在する理由は立法機関であることと、行政の監視役となることである。これはいくら首長優位型でも変わることはない。プレイヤーの監視をプレイヤーに委ねてはただの独裁ができあがるというわけである。しかしSimCityではプレイヤーは市長の独裁を停めるべき議会はないので好き放題出来る。逆に言えば議会の必要性を感じることが出来ると言えるだろう。 これは[#011]でも述べられていることだが、あくまでも行政的立場ではなく都市というもの自体を対象としたモデル認知に当たるのがSimCityなので、そこまで問うのはちょっと厳しいのかもしれない。もちろん、ここに挙げたアメリカの市長と議会の関係は一般論であるので一概にはこうであるとはいかないという点も見逃せない。何せアメリカの自治体は[#009]で述べたように必要に応じて作られた物ですから、計画もなしに発展して、複雑化してきたという側面もあるのですから。 |
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※1)チェック・アンド・バランス・・・権力などを分散し、各権力による相互の監視を行い、牽制と均衡をしながら一つの権力による独裁(専政)を防ぐ仕組み。checks and balances ※2)委員会の人員5〜10名は公選で選出される。委員会は所によってはかなりの決定権を持つことも多いため、それがなくなれば市長による統制がしやすいという面もある。 |
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参考文献:「現代の都市法」、「特集 海外の地方分権事情」、「地方自治の世界的潮流(上)」、「アメリカの地方自治」、「アメリカの地方自治−州と地方団体−」 |
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