第四章 まちづくり教育の例 |
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第2節 理論を還元するモデル都市計画の理論を知る SimCityは広域的な都市シミュレーターであるため、Howardの田園都市論やGarnierの工業都市論、Corbusierの大都市論というような都市の全体的なイメージを再現するシミュレーターとして扱うことも可能ではあるが、広範な都市の分析は非常に難しく、且つ曖昧なものとなるため新しい都市を作るわけではない「まちづくり」の教材としては若干的がはずれたものとなるため、その計画思想、背景、手法などは大いに参考にすべきではあるが、利用にはあまり向かないと思われる。その点については研究中であり(第二章を参照のこと)、ここではその可能性の追求については言明しない。 そのためクルドサックや近隣住区論などのような地区計画は、それが都市においてどのように機能するのかという点では非常にモデル化しやすく、且つ有効な手段と言える。クルドサックなどの思想は本来交通問題が発生したことによって生まれた思想であるため、あくまでもその地区計画手法の模型化ではなく、交通という都市の問題を実際に解決できる手法であるのかという分析から始めることにする。また、この手法が生まれた背景を知ることによって、現代にはどのような手法が望まれるのかといったプロセスの学習にもなる。ここではラドバーン方式について学習しながら実際に活かす手法を考えるようにする。 このような都市計画理論はただ闇雲に行えば良いわけではなく、かならず理論に沿って物事を捉えて行う必要があるのは現実と同じであり、ラドバーン方式をSimCityで再現するとしても、必ずしもそれは効果的な手段ではない時が発生する。その原因は何か、そしてなぜそのようになるのかを分析することが目的であり、その活動を通してその理論を現実世界へと還元する作業をするのである。
次に交通量を調べてみる訳だが、先にも述べたように発生交通量方式により交通の再現が行われているため、どれだけの建物規模、種類、人口密度かによって交通量が変化する。また、その地区(特にここでは住宅)から発生した交通は目的地との間の関係で変化するため、都市全体の構造についても把握しておく必要がある。コミュニティを重視する種の地区計画の影響はSimCityでは必ず表現できるというわけではないのでその点に注意することも必要である。 そして実際に行ってみることでどのように変化したかを確認させる。この変化を目で追うことで場合によっては道路を敷き直したりすることもあるだろう。実際予算の問題や土地所有権の問題から、こんなに簡単には出来るはずはないのだが、シミュレーションの特性はこういうときに活かすべきである。また、この活動によってなぜそのような結果になったかを分析する。このプロセスを繰り返していくことでその理論に対してどうやって利用するかを見いだすこともあるだろう。 また、こうすることで学生が他の都市計画思想に触れた場合もなぜこれが発生してどうやって行おうとしたのか、そして現代にはどういった手法が望まれるのかという点を頭の中でシミュレーションモデルを構築するとともにその詳細を学習し、実際の理論の追求を図るようになる。時にはSimCityでそれを試すこともあるだろう。SimCityにおいて必ずそれが反映されるわけではないが、及ぼす効果についての分析を行うことが出来るのである。 |
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