第二章 都市シミュレーション学の研究 |
|||
第2節 研究会Webサイト研究会では先のオープンとクローズの関係から、Webサイトを中心としたオンラインによる活動とゼミを基盤とした研究会というオフラインの活動の二元化をした。その為に今後主流となって行くであろうと思われる、オンライン活動のベースとなるWebページ作成に取りかかった。その点でまず参照したのは既存のSimCityファンサイト、そしてそれを受けて制作した自分のSimCityサイトを検証しながら制作をした。 (1)既存のファンサイトから SimCityはゲームソフトであるため、他のゲームと同じようにファンサイトが存在する。ファンサイトは、公式Webサイトとは異なった情報共有の場として多くの利用者が集う場所でもある。特にゴールが存在しないSimCityのファンサイトではいかに愉しむか、いかに納得のいく都市経営が出来るかというようにそれぞれの目的に合うコンテンツを探し出すのが特徴であると言える。ファンサイトはSimCityだけを専門的に取り扱っている物が多いが、A列車シリーズ*のような他のシミュレーションゲームと並列して紹介しているものもある。SimCityファンサイトでの内容は国内外を問わず、@Webサイト管理者による攻略情報の提供、A利用者から投稿された都市データの紹介とダウンロード、BBBSによる攻略情報の共有、の三つのコンテンツがおおよそどのサイトにも共通して有しているといえる。その他にも各サイト独自の様々なコンテンツがあるのだが、それは後述することにして、まずこの三点をその特徴を踏まえながら教育性について検証する。 @の攻略情報の提供、というのは管理者がSimCityをやりこんでそこから得た知識や攻略本からの情報を元にSimCityのゲームとしての攻略ガイドを提供しているものであり、これは管理者によって様々な方式で表現される。その種類は多岐に渡っており、「どういった手順で開発を行うべきか」「どうやって問題を解決するべきか」というような単なるゲーム攻略法から、「いかにしてSimCityを楽しむか」「実際の都市計画の技術を導入してプレイしてはどうか」などのコンテンツもある。ゲームの攻略法的なコンテンツでも様々なアプローチがあるとともに、実際の都市の計画手法などを取り扱うサイトあった。その目的はあくまでも教育性を持つものではないが、SimCityというものを現実と比較して楽しむという点では非常に大きな効果があったと言える。 Aの都市データ紹介とダウンロードというのはSimCityならでは、という点が強い。しかも、その製作作業もサーバーに空き容量があればいくらでも都市を投稿してもらって、都市の説明とともにWebページに貼り付けるという作業だけで可能なのである。どれぐらいその都市データについて説明を設けているか、というのはそれぞれのサイトによって様々ではあるが、大手のサイトであればあるほど説明が詳しくしてあるという傾向が強い。これは自分が造った都市を投稿して、どんな評価がそのWebサイト管理人にされるのかを期待するユーザーの心理を突く効果があるからと思われる。また、その紹介文からもWebサイト管理人と投稿者がどれほど都市について考えているのかもうかがうことが出来る。着眼点が人口だけにこだわらない都市の評価は様々な都市の投稿を促すことにもなっているようである。また、この中で実際の都市を自分なりに再現する、といった物も見受けられる。このような都市データのやりとりはアメリカの公式Webサイトでも行われており、こちらはコンテストを行うなど規模は大きい。 BのBBS*による攻略情報のやりとりは特に大手サイトで活発に行われており、SimCityプレイヤー同士が持てる知識を共有し合う場所として活用されている。初心者からの質問も熟練プレイヤーが丁寧に答えたりする光景もよく見られる。その時の説明に攻略本や自分で証明したSimCityの論理を元にすることが多いが、実際の都市を想定しながら自分のモデルを描いて説明する光景も見られるが、そこには都市計画の論理などが含まれることはない。SimCity初心者にとって質問しやすいBBSは書き込みに対してのレス(返信)が多い、速くレスがされる掲示板である。サイトによってはゲストブックと別に攻略情報や質問などを専門にやりとりするBBSを持っている。また、SimCityの続編が出たら実際の都市のこんな所を再現して欲しいなどの要望を意見交換しているところもあるようである。ここには様々な人の都市像と知識が含まれているのが非常に興味深い点である。 この調査は期間の関係のためSimCity 3000に限ってしまったのだが、SimCity 2000販売時にもそのファンサイトはいくつか存在した。特にインターネットを利用して複数(最高4人)のプレイヤーと協力または対戦プレイの出来るSimCity 2000 ネットワークエディションの登場により、従来の攻略情報と都市データのやりとりだけではなく、ネットワークプレイの出会いの場所となったこともあるという。現在のSimCity 3000を扱うファンサイトでSimCity 2000時代からの流れを受け継ぐ物は少ない。 (2)自己のWebサイト 私はSimCityを研究する事が決まってからSimCityを中心としたサイトを作成することにし、その内容は従来のファンサイトから得たビジョンを元にしながらも他サイトとは一線を画するものとした。研究対象としてのSimCityというテーマで取り扱うようにした為、対象がSimCityをある程度プレイした中級者以上の人が訪れるサイトとするようにし、そこからコンテンツをSimCityをプレイしたことのある人向けに設定して作成するようにした。その内容は@SimCityの紹介、ASimCityの用語集、B都市データのダウンロード、CSimCity関連のリンク集、そしてDSimCityと実際の都市の要素とを比較した研究レポートの五つにわけられる。@はイントロダクションとして用意したもので、サイトと研究内容の紹介をしている。AはDのSimCity研究レポートを読む上で必要となってくる基本的なSimCityの用語と知識を得るために、過去のSimCityと都市計画の若干の要素を含ませて用語の紹介している。Bは多くのファンサイトのように大々的に募集をかけず、以前に作成した可児市の都市データを紹介している。一つのデータしか掲載されていないもののその利用者は多く、いかにSimCityプレイヤーが他の人の都市データを参考にしようとしているのか、というのが垣間見ることが出来る。Cはリンクの依頼があったものと、優秀なファンサイトのリンクを貼るようにした。また、その為かページプレビュー数から得た数値によると利用頻度は高いようである。Dはこのサイトのメインとなるコンテンツであり、SimCityの仕組みを要素ごとに現実と比較しながら検証している過程を紹介している。例をあげてみると、SimCity内での住居や商業施設の区画密度と実際の区画との比較であったり、発電所の種類とその影響について比較しているものなどがある。これはSimCityをプレイする人たちに対しての攻略情報的なものではなく、実際の都市計画とどう異なっているかという点を前面に押し出したものではあるが、身近な感じで教育性を持たせたかったので非常に砕けた表現や、実際の社会問題などを絡ませて説明している6)。 (3)研究会Webサイトの作成 SimCityを研究対象としたWebサイト 都市シミュレーション学研究会(以下同研究会)は美濃学ゼミナールから出来た研究会であるが、活動の幅を広げるためインターネットを利用してその活動を紹介するとともに、多くの人々の参加を促し、インターネットを利用した研究活動をするべく会員を募集した。シミュレーションを用いた教育方法の研究とするため、SimCityをプレイする人を対象としており、現在はあくまでも専門的な知識を有しない者を対象としているのが特徴である。このように従来のような専門家が集う類の研究会と形式が異なるのは、(前述した研究会のビジョンを受けているのであるが)SimCity利用者の視点からいかに教育利用できるか、どういった点で自分は学習的効果を感じたかという方向から研究会で教育利用へのロジックを形成するという狙いと、ページプレビュー者や研究会員がその過程でいかに専門的な「まちづくり」の知識を吸収して発揮するのかを探るという狙いからである。その為、既存の学習について疑問に思っているエンパワーメントのある高校生や大学生を中心としているのである。 研究会のWebサイトは以上のような理由からSimCityファンサイトよりは一歩専門的な分野に足を踏み入れる形となるも、専門的知識を有していなくてもSimCityをプレイしたことがあればすんなりと入っていけるような作りにしている。また、Webサイトのタイトルをいかにも研究を押し出すのではなく、親しみを持って付き合ってもらうために「シムラボ」という名前にし、全体的なWebサイトのデザインも出来るだけわかりやすくすっきりとしたデザインとした。Web参加の会員も参加できるようにするためチャットによる会議参加の形式も徐々にではあるが確立してきた。このWeb会員と我々ゼミベースの会員の協力体制が出来れば理想の作業体制の確立が出来ることになる。
*A列車・・・ARTDING社から発売された鉄道会社経営シミュレーションシリーズ。正式名称はA列車で行こう。 *BBS(Bulletin Board System)・・・電子掲示板。近年のものはアイコン画像を選択するだけではなく、記事に返信をつけることが出来るもの、ファイルのアップロードが出来るものなどその種類は計り知れない。
|
|||
|