◆◆田園都市論とは?◆◆


 産業革命以来イギリスの都市発展は異常なまでの成長を見せ、生活環境の劣悪さと低賃金、長時間労働はますますひどいものとなり、コレラ等の伝染病がはびこるロンドン、マンチェスターなどの巨大都市ができあがった。当時のロンドンでは産業革命を経たおかげで世界の富と情報が集積する一方異常な過密が発生した。1851年のロンドンの人口は200万人いたとされ、多くの人々は都心から5km以内に居住していたといわれ、推定人口密度はなんと、約25,000人/kuとされた。都市人口の過半数を占める労働者住宅は経営者によって造られたものであった。
 その後、イギリスでは伝染病の克服が重要視され(支配階級にとっても重要だから)、下水道の整備、公衆衛生法、トレンズ法、クロス法などを実施した。しかし全般的にはまだ解決の糸口を見いだせなかった。都市は過密を続ける一方で
農村は人口が流出していた。いうなれば農村には魅力がなく、都市にはスラムができあがっていたのである。

 19世紀後半、そうしたロンドンの改革を行うべきとしたのが、社会学者エベネッツァ=ハワード(Ebenezer Howard)である。彼が唱えた『田園都市』構想は当初(1898)、「Tomorrow(明日−真の改革にいたる平和な町−)」という小冊子で紹介され、世界中の注目を浴び、1902年「Garden City of Tomorrow(明日の田園都市)」を出版した。これは現在の都市計画にも多大の影響を与えている。日本語版としては「明日の田園都市/E.ハワード著 長 素連訳(鹿島出版会)」があるが、かなり古いので訳も読みづらいかもしれない。
 ハワードの主張は、「人々を都市に牽引するなんらかの力に対して政策はうち勝つことが出来ないので、人を都市に引きつけるモノ以上の力を持って都市集中を阻止しなければならない」というもので、彼はそれを磁石を使って表現した。それが三つの磁石である。

 [三つの磁石]
 ハワードは現況をふまえ、都市を否定するのではなく、都市と農村の「結婚」をすべきだとした。
 『都市』と『農村』、それぞれを磁石として表現し、それぞれの長所を磁力として、人々を鉄針に例えた。その二つの磁石に加えて、都市と農村の長所のみを兼ね備えた『都市−農村(Town-Country)』という三つの磁石をもって都市の牽引力を表した。それこそがハワードの『三つの磁石』なのである。
 3つの磁石(別ウィンドウ)

【構造−ハードウェア−】
 [ダイアグラム1]
 ハワードは都市と農村の融合した都市のダイアグラムを提示した。
 彼の構想によると、都市の大きさは小都市の場合、約2,400ha、中央部の400haは居住地、商業地、工業地を配置し、周囲の2,000haは農業地として開発し、中央部に人口最高30,000人、農業地の人口2,000人と想定し、人口5.3万人の母都市を中心に適当な距離(30〜50km)を置き、鉄道でその間を結ぶというモノだ(はその6分の1円の中心が母都市となる)。 
 田園都市は農村に囲まれ食料を供給し、農村に都市の利便性を提供し、さらには都市の発展を抑制する(都市部を農村が囲むため)。

 [ダイアグラム2]
 中心部に公共施設を配備し、中央公園がそれを覆う。中心から放射状に伸びる並木道路と環状道路に囲まれて、5,000人ずつの居住地が6つに分断されている。まちを二分するのが幅130mの大街路(グランドアベニュー)であり、その中に学校、教会などのコミュニティ施設が設けられている。まち全体を取り囲む環状鉄道に面して、工業用地や市民農園が確保され、その外側の農村地域へと続いている。
 ・公共施設とは、公会堂、コンサートホール、劇場、図書館、博物館、美術館、病院などを示している。
 ・その周りの「中央公園(セントラルパーク)」は145エーカー(約5.8ha)あり、それを囲む「水晶宮(クリスタルパレス)」は公園に向かって開いている広いガラスのアーケードであり、天気の悪い時には家にこもりがちな市民を公園に連れ出すのに一役かっているのである。
 ・大街路の左右にある黒い三日月状のものは住宅と大街路の接する面であり、ここまで大街路の緑が続いている。これは大街路をより我々の目に広々と広がって見えるようにするためである。
 ・同心円状の道路はすべて街路樹が植えられている。
 ・駅は工業地帯を走る環状鉄道と他都市とをつなぐ幹線鉄道の引き込み線となっている。

 「ただしダイアグラムは単なる示唆にすぎないので、おそらく実際とは大いに異なるであろう」とハワードは注書きをしている。このダイアグラムを見ただけの都市計画者、それに関わる人たちはそのことについて理解しようとはしていなかったとされています。いつの時代も本質を見えてない人はいるものです。

【思想−ソフトウェア−】
 どちらかといえばこちらの方が重要といえるのだが、ここで紹介するのは控えさせてもらいます(関係ないから)。関係のありそうなものを載せておきます。興味のある人は調べてみてるのをおすすめする。読めば読むほど「都市計画のバイブル」といわれる理由がわかる。
 [公害]
 田園都市ではすべての機械が電気エネルギーで動作しているため、スモッグによる影響はないとされている。居住地と就業地が近いために(移動の自己完結)無駄な交通は発生しない。農家が都市を囲むため、都市化による弊害も抑えられるかたちとなる。
 [税金]
 過密した都市と違い、地価が低い土地でも物価が低いため市民はいままでよりも、ずっと生活がしやすくなります。しはらう税金も土地代のみというのが特徴。これこそが田園都市が他の自治体と異なる所だとハワードは述べている。



 

 つたない説明ですが、詳細は「明日の田園都市」を読んでいただける方がいいかと思います。なにかおかしな点があれば遠慮なく申しつけてください。

編:tkiyoto



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